晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

観た映画、読んだ本、訪れた場所などの記録

伊吹山〜お手軽百名山

伊吹山に登った。日本百名山の一つである。滋賀県と岐阜県にまたがっていて、滋賀県では最高峰である。標高1,337m。 登ったと言っても、歩いたのは9合目からである。伊吹山ドライブウェイというものがあり、ほとんど車で行けるのである。 【伊吹山ドライブウ…

映画「エドガルド・モルターラ」~心の臨界点

【あらすじ】(ネタバレあります) 実話に基づく。十九世紀の半ばのイタリアはボローニャ。ユダヤ人街で暮らす一家の元に、突然、ローマ教皇からの使者がやってくる。一家の子どもの内の一人、7歳のエドガルドを差し出せ、というのである。 その理由は、エ…

『道草』~リアル漱石・『猫』誕生の裏側

寝しなに夏目漱石の「道草」を読んだ。すぐ眠くなるので、一日数ページである。読み終わるのにひと月くらいかかった。面白かった。 『道草』は、漱石がイギリス留学から帰った時期の出来事が題材となっている。三十代後半くらいの時期である。 漱石の生い立…

本宮山〜東三河の最高峰

愛知県豊川市にある本宮山に登った。標高789m。東三河では、一番高い山とのこと。なお、東三河とは、愛知県の東部地域。豊橋市や豊川市、新城市、渥美半島などが含まれる。 本宮山の登山口には、ウォーキングセンターがあり、マップももらえる。トイレもある…

映画「Here」~自然の中の人間

【あらまし】 舞台はベルギーの首都ブリュッセル。ルーマニアからの出稼ぎ労働者の男性と中国系の植物学者の女性の出会いを描く。 出稼ぎ労働者シュテファンは、ビルの建設現場で働いている。夏は一か月間、工事がストップするので、仲間はそれぞれバカンス…

八丁味噌の郷〜サスティナブルなAKA-MISO

岡崎市八丁にある「八丁味噌の郷」を訪れた。赤味噌を370年以上にも渡って作り続けている合資会社「カクキユー」の本社と工場に売店と食堂が併設されている。 カクキュー本社屋。昭和2年に完成。国の登録有形文化財だが、現在も使われている。 昼前に到着。…

映画「オッペンハイマー」〜原爆の父の実像

原爆を開発した物理学者ロバート・オッペンハイマーの栄光と没落を描いた映画。180分の大作である。今年のアカデミー賞作品賞等の受賞作でもある。 【人物】 オッペンハイマーは、ユダヤ系のアメリカ人。ハーバード大学で化学を学び、ケンブリッジ大に留学。…

「三四郎」夏目漱石~田舎者の目から見た東京人物図鑑

夏目漱石の「三四郎」を読んだ。読むのは二回目か三回目である。今回は、寝る前に布団の中で少しづつ読んだ。すぐに眠くなるので、読み終わるのにひと月くらいかかった。少しづつ、話が進んでいくので、こういう読み方も面白いと思った。 明治時代の終わり頃…

読書『凡人のためのあっぱれな最期』樋口裕一

著者の樋口裕一氏は、71歳。文学に造詣の深い、インテリである。2022年に妻を亡くした。この作品は、樋口氏が妻の死に際して考えたことを著したものである。 樋口氏の妻は、まったくの健康だったが、突然子宮体癌が見つかり、治療の甲斐なく1年半後に亡くな…

映画「ミツバチのささやき」〜始まりの物語

「瞳をとじて」と順番が逆になったが、「ミツバチのささやき」を観た。1973年制作。スペインの名匠ビクトル・エリセ監督の第一作である。 1940年。スペインのカタルーニャ地方の寒村。巡回映画で「フランケンシュタイン」が上映される。熱心に見入る村の子ど…

大垣散歩〜水と芭蕉

JR大垣駅は、わりと大きな駅だった。JR以外にも、樽見鉄道と養老鉄道の起点となっている。 大垣は、松尾芭蕉が奥の細道の旅を終えた場所。奥の細道をたどる散策路(ミニ奥の細道)が整備されている。 大垣城の昔の外堀が水路(水門川)になっている。水路沿…

映画「瞳をとじて」〜失われた時を求めて

【あらまし】 スペインが舞台。老年を迎えた作家ミゲルは、片田舎の海辺の町で静かに暮らしている。昔は映画監督だった。二作目の作品『別れのまなざし』を撮影中、主役が失踪してしまい、映画を断念する。その作品の主役は、ミゲルの親友フリオだった。 作…

舘野泉コンサート~シャコンヌ

左手のピアニスト舘野泉さんのコンサートを聴きに行った。二度目である。 前回は、「鬼の学校」という曲を聴くためであった。そのコンサートで感銘を受けたので、舘野さんの書いたエッセイなども読んだりして、「シャコンヌ」という曲があるのを知った。バッ…

志段味古墳群と東谷山〜名古屋市の最高峰

志段味(しだみ)古墳群は、名古屋市を流れる庄内川の中流域にある。4世紀から7世紀にかけて造られた古墳が大小60基ほど集まっている。この古墳群は、「歴史の里」として整備されている。 JR中央線高蔵寺駅から徒歩約15分。わりと行きやすい場所にある。 庄…

映画「生きる」〜神の視点・カリカチュア・輪廻

2023年の5月、久し振りに映画館で見た映画が、カズオ・イシグロの脚本でリメイクした「生きる・LIVING 」だった。 先週は、映画館に行く時間がなかったので、録画しておいた原作「生きる」(黒澤明監督)を観ることにした。 「生きる」を観るのは、2回目で…

映画「笑いのカイブツ」~レゾンデートル

【作品のあらまし】 原作は、同名の構成作家ツチヤタカユキ氏の自伝的小説。 ツチヤは、母と二人暮らし。就職もせず、部屋にこもってお笑いのネタを考え続けている。テレビの大喜利でレジェンドを獲得し、新喜劇の劇場に漫才の台本を持ち込む。才能が認めら…

映画「みつばちと私」〜生まれ直しの儀式

【あらまし】 夏のバカンスをスペインバスク地方の実家で過ごす母と3人の子ども。末っ子のアルトールは、男の子であることに違和感を覚えている。愛称のココ(男の子)と呼ばれることも嫌う。髪を長くして、マニュキュアをしている。プールは恥ずかしくて入れ…

猿投山~愛知の高尾山

猿投山は、愛知県豊田市と瀬戸市にまたがる標高629mの山である。手軽に登れる山として、ファミリー層にも人気という。 名鉄豊田市駅から、とよたおいでんバスに乗って、約30分。猿投神社前で降りると、午前10時半に登山口に着く。 まずは、猿投神社で当日の…

映画の愉しみ~一本で三度おいしい

今年の5月連休明けから、映画館に通い始めた。それから約半年。週に1〜2本を観る。映画館で映画を観るのは、愉しい。 【観る前】 映画館の上映スケジュールを観て、どの映画を観ようかと考える。予告編を観て、これを観ようと決めていることもある。公式サイ…

映画「PERFECT DAYS」

東京の下町で公衆トイレの掃除人として働く男。古いアパートに住み、朝起きて、歯を磨き、髭を整え、着替えて、外に出て空を仰ぎ、缶コーヒーを買い、軽自動車に乗ってカセットで古い歌を聴き、丹念にトイレ掃除をし、神社でサンドイッチを食べ、木漏れ日の…

皇居と出光美術館、丸の内界隈

【皇居】 昔の江戸城が皇居になっていること知っていたが、ピンとは来ていなかった。たまたま、近くに宿泊したので、朝早いうちに行ってみることにした。 皇居の東御苑と皇居外苑は、普段から一般公開されている。開門は午前10時。裏門の平川門の方から入ろ…

映画「VORTEX 」〜人生は夢の中の夢

【あらまし】 アパートに住む映画評論家の夫と元精神科医の妻の老夫婦。夫は心臓病を患い、妻は認知症になっている。二人が亡くなるまでをドキュメンタリータッチに描く。 【人生は夢の中の夢】 初めの方で老夫婦が仲良く、ベランダで乾杯をする場面がある。…

三重県立美術館~「絵本原画の世界」展など

三重県立美術館は、JR&近鉄津駅西口から、徒歩10分。少し、坂を上ったところにある。 わりと大きな美術館であった。外観は普通の公共施設という感じである。 ちょうど「絵本原画の世界」展をやっていたので、観る。観覧料一般千円。入ると、受付係の人…

映画「戦場のピアニスト」4Kデジタルリマスター版

2002年公開の「戦場のピアニスト」のリマスター版。カンヌ映画祭パルムドーム賞など数々の賞を受賞したした名作である。 実在のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの著書が原作。ナチスのホロコーストから逃れ、生き延びた実話による。 ショパンのノ…

映画「私がやりました」〜逆転の発想

【あらまし】 フランス映画。クライムコメディ。 1930年代。売れない女優と駆け出しの女性弁護士。親友の二人は安アパートで貧乏暮らし。 女優は、有名プロデューサーから愛人になるよう迫られ、噛みつき押し倒して、逃げ帰る。 驚いたことに、そのプロデュ…

舘野泉「米寿記念ピアノ・リサイタル」〜制約は自由にする

【鬼が弾く】 今年のまだ寒い時期、NHKBSでピアニストの舘野泉さんを特集した「鬼が弾く」という番組*1を観て、とても心を動かされた。 舘野さんは、日本を代表する優れたピアニストだったが、65歳の時に脳溢血で倒れ、右半身が不自由になった。その後、左手…

映画「蟻の王」

【あらまし】 1960年代のイタリア。哲学者、詩人、劇作家かつ蟻の研究者のアルド・ブライバンティが巻き込まれた裁判の顛末を描いたもの。実話に基づく。 アルドは、演劇や詩を教える私的サークル「塔」を開いていた。そして、教え子の青年エットレと互いに…

DIC川村記念美術館~山の中のメルヘン

DIC川村記念美術館は、千葉県佐倉市の山の中にある。京成佐倉駅からの無料送迎バスで30分ほどで到着する。 DICとは、大日本インキ化学工業の現社名である。2代目社長川村勝己氏が収集したコレクションを展示している。 バスの発着場の横にチケットブース…

映画「火の鳥 エデンの花」~テヅカは偉大なり

【あらまし】 手塚治虫の「火の鳥:望郷篇」を映像化したもの。おおむね、原作に沿って作れらているが、設定にいくつか違いや省略があるほか、結末が異なっている。 【あらすじ】※パンフに書いている程度に留めます。 地球からロケットに乗って逃げて来た若…

映画「パトリシア・ハイスミスに恋して」~全身小説家

【あらまし】 『太陽がいっぱい』『リプリー』などの映画の原作を書いた小説家パトリシア・ハイスミスの人生を紹介するドキュメント。生誕100年を経て公開された日記や本人のインタービュー映像、元恋人たちや親類へのインタビュー、映画の映像などを織り…