晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

観た映画、読んだ本、訪れた場所などの記録

映画チャップリン「黄金狂時代」~喜劇役者は笑わない

チャップリンの「黄金狂時代」は、1925年に公開(アメリカでは6月、日本でも同じ年の12月)された。今からちょぅど100年前である。映画館で4K修復版を上映していたので、観に行った。 「黄金狂時代」は、数あるチャップリン映画の中でも傑作とされる。当初は…

三宅香帆「考察する若者たち」~若者たちは報われたい?

なんでも、近頃の若者は映画や本をただ楽しむだけでは飽き足らず、報われることを求めるのだとか。たとえば、『ワンピース』とか『鬼滅の刃』の映画が公開される。するとすぐに考察動画なるものが配信される。それは、その作品に隠された伏線や裏設定を解説…

映画「チャップリン」~アイデンティティを探す旅

※ネタバレあり 【あらまし】 チャップリンの出自をめぐる物語。チャップリンの息子マイケルが語り手となって、亡き父のルーツをめぐってインタビューをして歩く。 【8分の1】 チャップリンには、実はロマ(ジプシー)の血が流れていた、ということがテーマで…

映画「旅と日々」~旅の効能

※ネタバレあり。 【あらまし】 つげ義春の短編漫画「海辺の叙景」「ほんやら洞のべんさん」をもとにした作品。舞台を現代に移し替え、劇中劇の手法を用いられる。 ひなびた漁師町の海辺で偶然出会った若い男女。何となく一緒に時を過ごす。台風で荒れる海に…

映画「私たちが光と思うすべて」~私たちはどう生きるか

※ネタバレあり。 【あらまし】 インドのムンバイ。人々がごったがえす大都会の片隅で暮らす看護師のプラハとアヌ。年上のプラハはしっかり者だが真面目で堅物。若いアヌは無邪気で自由奔放。二人はルームメイトである。 プラハの見合い婚をした夫は出稼ぎで…

映画「ルノワール」〜観察者としての子ども

※ネタバレあります。 【あらまし】 1980年代の岐阜市あたり。小学5年生フキは、好奇心が旺盛な女の子。死んだらなぜ悲しいのかとか、テレパシーなどに興味深々である。変わった作文を書いて、教師から心配されたりする。 フキは一人っ子で、両親は共働きであ…

映画「教皇選挙」~コンクラーベの実際

※多少のネタバレあり。 【コンクラーベ】 コンクラーベ(Conclave)とは、新しいローマ教皇を選ぶ選挙のことである。「教皇候補者たちが密室に閉じこもって、新しい教皇が決まるまで何度でも互選で投票を繰り返す。投票の結果は煙の色で知らされる」くらいの知…

映画「小学校〜それは小さな社会〜」〜日本人の作り方

【あらまし】 東京都のとある公立小学校の1年を記録したドキュメント映画。入学する1年生と卒業する6年生に焦点をあてて、無邪気な子どもたちが、どのような教育を受けて、協調性や勤勉性を身に付けていくか、ということが描かれる。 【一年生】 小学校への…

静嘉堂文庫美術館「平安文学、いとをかし」展~物語の生命力

静嘉堂美術館 静嘉堂文庫美術館は、千代田区丸の内にある明治生命館の一階にある。地下鉄千代田線二重橋前の3番出口から上がると、美術館の前に出る。 静嘉堂文庫は、三菱財閥を作った岩崎彌太郎の弟の彌之助が創設した。岩崎家が収集した美術コレクション…

映画「リュミエール!リュミエール!」130年前の世界と日本

フランスの映画発明者リュミエール兄弟の作品を紹介する映画。いわば映画の映画である。 リュミエール兄弟は、エジソンが発明したキネトスコープから影響を受け、動画を映写する装置(シネマトグラフ)を発明した。1895年のことである。 17メートルのフィルム…

映画「本心」~延長線上の未来

※ネタバレあり。 【あらまし】 近未来のSFヒューマンドラマ。ミステリー(謎解き)仕立てで物語が進んでいく。 本作の謎は、自殺した母の本心。仲の良い親子だったのに、なぜ何も言わずに自死を選んだのか。最後に伝えたかったことは、何だったのか‥‥ 息子は…

映画「ナミビアの砂漠」~何をしたいのか分からない人

※ネタバレあり。 【あらまし】 脱毛サロンで働く21歳の女性。同棲している交際相手から、別の交際相手に乗り換える。相手のことは好きなのだが、些細なことで爆発してしまう。自分のことは棚に上げて、相手を責める。嘘も平気でつく。精神科の診察を受けた…

映画「僕のお日さま」〜雪の結晶のような恋

※ネタバレあり。 【あらまし】 北国の冬。ここでは、男の子はみな雪が降るとアイスホッケーをして、雪がない季節は野球をすることになっているらしい。 少年は、野球もアイスホッケー下手で、やる気もない。どうやら、争いごとが嫌いなタイプのようだ。 アイ…

ホキ美術館〜見ることの不思議

ホキ美術館は、千葉市にある世界でもまれな、写実絵画専門の美術館である。「ホキ」というのは、創設者の姓「保木」からとったものと思われる。収蔵作家一覧のには50人近い画家の名前が挙がっているが、ほとんどが現役作家である。そういう意味では、現在…

『星の子』〜子供の目から見た世の中

信仰宗教に取り込まれた家族を、家族の次女であるちひろの目線から描いた物語。 子どもがどのように親の宗教に巻き込まれていくのか、ということがよく分かるのだが、それを声高に訴えているものではない。 それよりも、子どもが世の中をどのように見ている…

アーティゾン美術館~「作品と空間」展

アーティゾン美術館は、東京駅八重洲中央口から出て、徒歩5分のとても行きやすい場所にある。以前は、「ブリヂストン美術館」という名称だったが、新美術館として2020年に開館した。23階建ての高層ビル「ミュージアムタワー京橋」の1~6階が美術館…

映画「箱男」~箱とは何か?

「箱男」は、箱を被った男が奇妙な体験をする話である。原作は阿部公房。今回は小説を読んで予習してから観に行った。 箱男は、段ボールを被って、その中で暮らし、街を徘徊して、のぞき窓から外を見る生活を送る。普段は気にしないが、実は街のそこここにい…

映画「僕の家族と祖国の戦争」〜誰が悪いのか

【あらまし】 1945年。終戦直前のデンマークのとある町。小規模な市民大学の学長一家の物語。ソ連に進行されたナチスドイツは、自国民を「難民」として、占領下の地域に移送する。デンマークには、20万人もの「難民」が連れてこられ、この町にも500人余りの…

『虞美人草』〜華麗なる失敗作

寝しなに『虞美人草』読んだ。長いので、二月ほどかかった。読み出すとすぐに眠気が来るので、睡眠導入剤としては優秀であった。 【登場人物】 小野さん 大学を優秀な成績で卒業した詩人。博士論文を執筆中。孤児であり、若い頃は貧乏で、京都では孤堂先生に…

佐川美術館〜さざなみの美術館

佐川美術館は、滋賀県守山市の琵琶湖畔にある。宅急便で有名な佐川急便の創業40周年記念事業の一環として開館された。 「湖畔に佇むように建つ、こぢんまりとした美術館」を想像していたのだが、訪れてみると、意外と大きかった。湖畔ではあるが、湖に面して…

映画「ボレロ」〜音楽に呑み込まれた作曲家の生涯

作曲家ラヴェルの生涯を「ボレロ」作曲のエピソードを中心に描いたもの。 ラヴェルと言えば、「ボレロ」と「亡き王女のためパヴァーヌ」くらいしか知らず、豪快な中にも叙情的な感性を持ち合わせた人物というイメージだったが、実は繊細で神経質な人であった…

映画「風が吹くとき」~善良な市民が核戦争に巻き込まれたら

【あらまし】 1986年制作のイギリスのアニメーション映画。第二次世界大戦から40年後。イギリスの片田舎の一軒家で年金暮らしをする夫婦が核戦争に巻き込まれるなりゆきを描く。 夫は、図書館で新聞を読み、まもなく核戦争が始まると知る。政府発行のパンフ…

『草枕』〜非人情の芸術論

スマホを忘れた日、カバンの中に入っていた『草枕』を読んだら、案外面白かった。それで、入浴中にちょびちょび読んで、短い話なので、ニ遍読んだ。『草枕』は入浴中に読むのがちょうど良い。 『草枕』にストーリーはない。漱石自身、ただ美しい感じが読者の…

映画「ルックバック」〜人は何で漫画(または絵)を描くのか

✳︎ネタバレはありませんが、多少内容に触れます。 漫画に青春をかけた二人の少女の成長物語。原作は、藤本タツキの漫画である。58分と短いが、人気の作品らしい。 漫画家になるためには、ひたすら描き続けなくてはならない。そして、運良く漫画家になったら…

映画「ある一生」~意味のある人生とは?

✳︎ネタバレあり 【あらまし】 20世紀初め頃から70年頃にかけて、スイスの山と谷で生きて死んだ無名の男の一生をたどる。 幼い頃、孤児になったアンドレアス・エッガーは、農業を営む伯父に引き取られる。伯父からは、酷い扱いを受け、家僕のように扱われる。…

映画「墓泥棒と失われた女神」~現代の寓話

※ネタバレあり 【あらまし】 イタリア・トスカーナ地方の田舎町。イギリス人アーサーは、地下の遺跡を探し当てる特殊能力を持っている。なぜか、盗掘団の一員となっていて、古代エトルリア人の墓を掘り返しては、埋葬品を売って日銭を稼いでいる。 アーサー…

映画「クレオの夏休み」〜子どもの幻滅と成長

※ネタバレあり。 【あらまし】 フランス映画。物心つかない頃に母と死別したクレオは乳母のグロリアに育てられる。グロリアはアフリカの島国カーボベルデの出身。クレオは、グロリアにべったりだが、グロリアは家庭の事情で帰国することになる。クレオは、グ…

映画「大いなる不在」〜ミステリー仕立てのヒューマンドラマ

※多少のネタバレあり。 長年、音信不通だった父親が保護された知らせを受けた息子が、認知症になってしまった父の過去を解き明かしていくという話。 息子が施設を訪ねても、父は妄想に囚われていて、話がかみ合わない。父の家はもぬけの殻で、父の再婚相手は…

映画「WALK UP」~上昇と下降

【あらすじ】ネタバレあり。 四階建てのアパートが舞台。インテリア・デザイナーの女性が所有している。そこに旧友の映画監督が娘を連れて訪問するシーンから始まる。娘は、美術を専攻していたが、仕事がなくインテリア・デザイナーを志望している。 所有者…

映画『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』〜終わることのない追究

ドイツの芸術家アンゼルム・キーファーのドキュメンタリー映画。監督は『Perfect days』のヴィム・ヴェンダースである。 【アートのアート】 アンゼルム・キーファーは、戦後ドイツを代表する画家とのこと(この映画で初めて知った)。 ドイツの歴史、ナチス…