晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

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映画「ナミビアの砂漠」~何をしたいのか分からない人

※ネタバレあり。

【あらまし】

 脱毛サロンで働く21歳の女性。同棲している交際相手から、別の交際相手に乗り換える。相手のことは好きなのだが、些細なことで爆発してしまう。自分のことは棚に上げて、相手を責める。嘘も平気でつく。精神科の診察を受けたり、カウンセリングを受けたりもするが、自分は何なのか、何をしたいのかが分からない。そんな人の日常を描いたもの。

ナミビアの砂漠】

 最終的にナミビアの砂漠に行く話なのかと思ったが、そうではなかった。ナミビアの砂漠にある野生動物の水飲み場ライブカメラが設置されていて、女性はときどきそれを眺める。心が荒れている女性は、その映像を見て、気持ちを落ち着けている様子である。何もないところで、動物たちが生存のために水を飲みに来るというシンプルさが良いのかもしれない。

【混乱】

 女性は、エネルギーにあふれている。しかし、方向性が定まらない。根底に怒りを抱えている。特に女性一般に対する男性の無神経や無理解に強く反発する。父親との関係や中国系であることなどが関係しているのかもしれない。カウンセラーからは、「あるべき思考」が原因の一つであるかもしれないと指摘される。真面目な面もあり、職場ではきちんと働いているし、恋人の仲間のキャンプに参加するときには服装にも気を配り、礼儀正しく振舞う。その一方で恋人には依存して、甘え、完璧さを要求する。恋人たちは振り回される。

 女性がルームランナーで走っている心象風景が描かれる。その中では、恋人への暴力シーンは、スマホの中の動画に過ぎない。走っても走っても前に進まず、現実の生活は表面的で、心からは離れてしまっていることが示唆される。

【優しい男たち】

 前の恋人も後の恋人も、女性には優しい。堪忍袋の緒が切れて、乱暴な言動に出そうになるが、「大きな声を出さないで!」と叫ばれると、怯んでしまう。この辺りの男性像は、現代風である。二人とも、女性に振り回されつつも、離れられないのは、それだけ魅力があるということだろう。

【感想】

 恋人と語らう和やかなシーンで終わったが、特に解決は見いだせず、今後二人の関係が平穏に向かうとも思えなかった。思い切って、ナミビアに行って見るのも一法では、と思えた。

 

ナミビアの砂漠

★★★