作曲家ラヴェルの生涯を「ボレロ」作曲のエピソードを中心に描いたもの。
ラヴェルと言えば、「ボレロ」と「亡き王女のためパヴァーヌ」くらいしか知らず、豪快な中にも叙情的な感性を持ち合わせた人物というイメージだったが、実は繊細で神経質な人であったと知った。映画の中では、「旋律はどうでもいいから、指定通りのテンポで演奏しろ」みたいなことを言っていて、テンポへのこだわりが強い。完璧主義なのか、一曲を作るのに何年もかけていた。
ラヴェルは「ボレロ」を作るのも大変苦労した。斬新な音楽が出来上がり、バレエの振り付けともマッチして大成功。ただし、ラヴェル自身は、扇情的なダンスが気に食わなかった。ラヴェルとしては、機械化が進んだ文明のカタストロフといったものを表現したかったようだ。成功したのは思いの外で、ラヴェルと言えばボレロとなってしまい、生涯付いて回ることになって、それに苦しめられる。
俳優にある役柄のイメージが付いてしまい、それに苦しめられるということはよくある。たとえば、植木等と言えば「無責任男」でだが、本当は責任感の強い人だった。歌手でも作家でも作曲家でも似たようなことはあるだろう。
ラヴェルは、音楽の才能がありすぎ、繊細すぎてかなり生きづらかったようである。音楽と結婚したとか言って、生涯独身であったし、長年の恋人は人妻で、相手から誘われてもキスすらしなかった。
病気で作曲ができなくなっても、頭の中では音楽が鳴り響いていたという。才能があり過ぎるのも考えものである。
本作は、ボレロの誕生の時期を中心に、回想シーンが順不同に挿入されていて、予備知識がないと分かりにくい。靴にこだわりがあるらしいラヴェルが靴を忘れるシーンが何度かあったが、あれは何だったのだろう。
クラッシック好きで、ラヴェルに興味のある方は、見て損はない作品。
★★★