※多少のネタバレあり。
長年、音信不通だった父親が保護された知らせを受けた息子が、認知症になってしまった父の過去を解き明かしていくという話。
息子が施設を訪ねても、父は妄想に囚われていて、話がかみ合わない。父の家はもぬけの殻で、父の再婚相手は姿を消している。ただし、父は大量のメモを自宅に残していたほか、父の手紙や父の妻の日記が残っていて、それらを手掛かりに息子が父の過去を解き明かしていく。
スリリングな感じで始まり、過去と現在を交錯させ、俳優である息子が演じる劇とテーマを重ねつつ、最初のシーンに戻って終わるなど、構成も工夫がされていた。ミステリー仕立てだが、老いや親子の和解といったテーマも織り込まれたヒューマンドラマであった。
個人的な感想としては、身勝手な父親の自業自得なのでは?とか、父の妻も少々無責任なのでは?とか、その割には息子は誠実で好感が持てるな、といったところで、面白くは観たものの、心を揺さぶられるほどではなかった。まあ、受け取り方は人それぞれである(私はハラハラドキドキが苦手なので、それも評価に影響している)。なお、俳優は実力派揃いとのことで、確かに父親役は迫真の演技であった。
昨年観た「怪物」を少し思い出した。海外の映画は、最終的に人と人が通じ合うことが多いようだが、日本の映画では、通じ合えないまま、人生そんなものさ仕方がないね、といった感じで終わることが多いように思う。文化の違いだろうか。
「大いなる不在」
★★★★