※ネタバレあり。
【あらまし】
台北に引っ越して、狭いアパートで暮らし始めた母と姉、幼い妹。母は、夜市で麺の屋台を始め、姉は檳榔の実を売るアルバイト、妹は幼稚園。母と姉はいがみ合っている。台北にある母親の実家に妹を連れて帰るのは、初めてのこと。妹を歓迎する祖母に対して、祖父は妹が左手でスプーンを使うのを見て怒り出す。「左手は悪魔の手だ」と言って。
家族には、過去に色々あったようだ。そして、それぞれ隠し事を抱えている。母親は、貸店舗の家賃を払えないが、祖母からは支援を断られる。その祖母は、密入国の手引きをして金を稼いでいる。姉は、高校をドロップアウトしていて、アルバイト先の店主とわりなき仲になる。大人たちが大人の事情であたふたする中、妹は独自の行動を始める。左手は、悪い手なのだから、やましいことをするときは左手を使えばいい‥‥
【子どもの論理】
大人から相手にされない妹は、小物の万引きをしては、それを宝箱に隠し続ける。大人をまねて秘密を持とうとしたのだろうか。(結局は、姉が見つけて、品物を返して回ることになる。姉はグレているようで案外真面目な性格である。また、店の人たちは優しい)
妹は、母が祖母からの支援を断られたのを見て、祖母の家から価値のありそうな茶封筒を盗み出す。(これで、祖母は違法行為の発覚を免れ、祖母を救うことになり、結果として母への支援を引き出ことができた)
妹は、盗みが悪いことだと分かっている。だから左手を使う。やったのは自分ではなく、悪魔の左手だというわけだ。妹が、大人たちから理不尽な扱いを受けても、平然と明るく振舞えるのは、悪いのは自分ではないというポジションを保つことができているからかもしれない。
【家・世間体】
この映画によれば、台湾は家族の繋がりが強いように見える。祖母の還暦祝いには、一族が集まる。主催者は、祖母の長男(母の弟)である。その一方、出戻りの母は他人も同様の扱いを受ける。また、不倫相手の子を妊娠した姉は、不倫相手とその妻から、「男の子なら貰い受ける」という驚きの提案を受ける。長男を家の跡継ぎにするという考えが根強く残っているようである。
その一方で、改名は簡単にできるようだ。姉の元同級生は、クラスの半分の子は、改名したという。家族のつながりが強い割には、個人のアイデンティティは流動的なのだろうか。
「左利きの少女」
★★★★
台湾の社会を背景に旧習や家族のしがらみ、経済的な困窮の中、何とか人生を立て直そうとする家族をそれぞれの立場から描いている。シリアスさの中にコメディもあり、最後には希望が描かれる。誇張もあるだろうが、台湾社会を知るきっかけになる。