※ネタバレあり。
【あらまし】
フランス映画。物心つかない頃に母と死別したクレオは乳母のグロリアに育てられる。グロリアはアフリカの島国カーボベルデの出身。クレオは、グロリアにべったりだが、グロリアは家庭の事情で帰国することになる。クレオは、グロリアを恋しがり、父に頼んで夏休みにグロリアの元に遊びに行く。その一夏の体験と、出会いと別れを描く。
【心象風景】
作品中ではときどきアニメーションが挿入される。荒いタッチの絵で、これはクレアの心象風景を表している。幼い心に色々な記憶や感情が渦巻いていることが分かる。母との別れを経験し、グロリアに頼って生きてきただけに、グロリアとの突然の別れは耐えがたものとなったのだろう。
【カーボベルデ】
この映画を見るまで知らなかったが、カーボベルデはアフリカの西の沖合に浮かぶ群島である。15世紀までは無人島で、ポルトガル人によって「発見」され、以来、ポルトガル人とアフリカから連れてこられた人々が住み始めた。空港や港に関連する収入と観光が主たる産業だが、移民による外国からの送金も大きな収入源となっている。公用語はポルトガル語だが、主に使われているのはカーボベルデ・クレオール語。宗教は主にカトリックである。火山島で自然が美しい。カーボベルデの生活風景をかいま見ることができることもこの映画の魅力の一つと言える。*1
【幻滅と成長】
空港でクレオはグロリアの姿を見ると、大喜びで飛びつき、グロリアもクレオを抱きしめる。観ている方も嬉しくなる。しかし、クレオは次第に、グロリアは自分だけのものではないという事実に直面していく。
グロリアには、二人の子どもがいる。長女は高校生くらいで、妊娠している。長男は中学生くらいである。やってきたクレオに、長女は大人の対応をするが、長男は納得がいかない。長男は、クレオに母親を取られたと思っている。そんな中でもクレオは、珍しい食べ物を食べ、海や海岸で遊んだりと元気に過ごす。そうしながらも、グロリアにも別の顔があることに気づいていく。フランスにいたころは、グロリアは乳母としてクレオにだけ関心を注いでくれていたが、現実のグロリアは色々と事情があるのである。それがなんとなく分かってくる。
そのうち、長女が出産をする。赤ちゃんはかわいいが、手間がかかる。グロリアも赤ん坊の世話で疲れ果てる。クレオは赤ん坊にグロリアを取られたと思う。そして突発的な行動に出てしまう。
夏休みが終わり、二人は空港で別れる。クレオは、来た時と少し違っている。再会することもあるかもしれないが、二人の関係は、これまでのような純粋なものではありえないだろう。それは成長と言えるのかもしれないし、幻滅と言えるのかもしれない。
「クレオの夏休み」
★★★★