晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

観た映画、読んだ本、訪れた場所などの記録

『星の子』〜子供の目から見た世の中

 信仰宗教に取り込まれた家族を、家族の次女であるちひろの目線から描いた物語。

 子どもがどのように親の宗教に巻き込まれていくのか、ということがよく分かるのだが、それを声高に訴えているものではない。

 それよりも、子どもが世の中をどのように見ているのか、何を感じているのか、何を楽しみにして、何を避けようとしているのかということが、よく書かれている。

 ちひろは、5年前の法事ででた弁当を楽しみに、一人で遠方の法事に出掛けて、弁当の中身が薄くなったことに心から落胆するのである。ほとんど話したことのない年上の嫌な男の子から「来なかったら殺す」と言われたのを真に受けて出かけていき、初めて行ったドーナツ店でドーナツを夢中で食べるのである。

 ちひろは、年齢よりも幼い感じである。宗教にはまっている両親とも仲良く、霊験あらたかな怪しい水を学校に持って行ったりしている。中学3年生になっても、両親を批判することもない。面食いで、格好良い男の子を次々と好きになるが、中学3年生になってからは、数学のスポーツマンタイプの教師が好きになり、ひたすら似顔絵を描く。その教師からは、酷いことを言われてしまうのだが、それでも案外ケロッとしている。

 児童文学や絵本で、子ども目線で書かれているものもあるが、大人が子どもの口調を真似て自分の言いたいことを言っていることが多い。この作者は、主張のようなものがなく、見聞きしたことをそのまま書いたという感じなのである。子ども自身は、言葉が未熟であるし、そもそも自分の感性は普通だと思っているから、それをことさら表現しようとしない。だからこういう作品はめったに現れない。

 稀有な才能だと思う。