DIC川村記念美術館は、千葉県佐倉市の山の中にある。京成佐倉駅からの無料送迎バスで30分ほどで到着する。
DICとは、大日本インキ化学工業の現社名である。2代目社長川村勝己氏が収集したコレクションを展示している。
バスの発着場の横にチケットブースがある。1,200円(常設展)。9時半の開館前にはまだ10分ほどある。辺りをウロウロしていると、庭園の門が開いた。
美術館は、広大な庭園の中にある。もともとあった里山の地形を生かしたのだとか。森の小道の中を通って、歩いていく。小鳥がさえずる。素敵である。
池が現れる。水鳥たちがのんびりと寛いでいる。
美術館は、城館を思わせるメルヘンチックな建物であった。
受付をして、ロッカーに荷物を預け、展示室へ。
図らずも一番乗りになってしまう。美術館独特の何とも言えない匂いがした。知的な気分になる。
最初は、ヨーロッパ近代絵画の部屋。ピサロ、シダネル、モネ、ルノワール、ボナール、ブラック、ピカソ、シャガール、レオナールフジタ、キスリング、マリーローランサンなど、印象派以降の有名な画家の作品が並んでいる。
音声ガイドの表示があるので、受付の人に聞いてみると、スマホにアプリをダウンロードすると解説が聴けるとのこと。さっそく、試してみる。なるほど。
次の小部屋は、レンブラントの小部屋。「広つば帽を被った男」の一点だけが飾られている。どこかで見た覚えのある絵である。解説を聞きながら、まじまじと見る。なるほど。すごい技術。
長細い部屋があり、カンディンスキーなどの抽象画が展示されている。次の部屋は、やや広い。「色彩と知覚」というテーマで、ジョセフ・アルバースという人のカラフルな作品を展示している。
この部屋の奥に茶席がある。開店時間の10時半になるのを待って、入ってみる。これも一番乗り。抹茶と生和菓子のセットで800円。ひとり静かに庭園を眺めながら、休憩する。
元気が出たところで、渡り廊下を渡って、次の展示室へ。第二次世界大戦前後のヨーロッパ美術の部屋。天井が低く、暗い部屋にエルンストやマグリットなどのシュールレアリスムの作品と、デュビュッフェなどアンフォルメル絵画*1の作品が展示されている。
細長い廊下を歩いていくと、マーク・ロスコの部屋。この美術館の売りの一つである。静かな空間に、赤黒い画面に四角い形が浮かんだ7枚の巨大な壁画が部屋を取り囲むようにして並んでいる。洞窟に入り込んだような感じである。
ロスコは、ユングやフロイトの深層心理学やニーチェを読み、神話を主題にして、現代人の精神的な空虚を和らげようとしたのだとか。*2
中央の大きな椅子に座って、しばし眺める。なんだか、地下の深いところに迷いこんで、7つの門を前にして、どの道に進もうかと悩んでいるような気になってきた。
もちろん、どの門にも進まずに出口から出る。
階段を上って二階に進む。一転して、開放的な空間。左右に大きな窓があり、庭園の緑が映し出される。中央には、ジュールズ・オリツキーの「高み」という巨大な作品。全面青色。東京スカイツリーから空を見たときのことを思い出す。
最後の広い部屋は、戦後の抽象美術の部屋。絵画だけでなく、オブジェもある。インクをぶちまけただけの作品(ポロック「コンポジション」)、真っ黒な画面(ラインハート「抽象絵画」)、四角が並んだだけの作品(ステラ「同心正方形」)などなど。これらは、解説を聞いてやっと意味が分かる。
ゆっくり見て回って、2時間弱。ショップに寄って、ロスコの絵ハガキのセットを買う。7枚で700円。
外に出ると、雨。望遠カメラを持ったグループが、池の方にレンズを向けていた。水鳥でも撮っているのだろうか。
レストランに寄る。せっかくなので、ランチコースを注文。前菜、スープ、パスタ、メインディッシュ、デサート、コーヒー。ほどよい量でおいしく食べる。3,800円。美術館は空いていたが、 レストランは次第に混み合ってきた。何かの記念で食事に来たらしい家族がにぎやかに話していたり、年配の女性のグループが長いテーブルを囲んでしずしずと会食をしたりしている。
天気もあいにくだったので、庭園の散策はせずに、帰りのバスに乗った。
常設展示は定期的に入れ替えがあるとのこと。
また、訪れてみたい。