【主役は津軽塗】
「バカ塗り」というのは、津軽塗の異名で、馬鹿正直に何度も塗り直すので、こう呼ばれるのだとか。
家業の津軽塗を娘が継ぐまでの話。自分探しと成長譚、家族との葛藤などに今風のテーマが織り込まれている。
漆を塗り込み、器を磨いていくシーンに時間をかけている。登場人物はみな津軽塗の美しさ、堅牢さ褒めたたえ、津軽塗の素晴らしさをアピールしていた。(実際、素晴らしいと思います)
それに加えて、折々の四季、岩木山や川沿いの桜並木、美味しそうな和食など、日本の美しさが強調される。まるで、日本の自然と文化のPR映画のようであった。
海外でも公開されたら、日本の弘前という町に、若くて美しく健気な女性が作った美しく神秘的な漆器があると思い込んだ外国人が大挙して押し寄せるようになるかも知れない。
【後継者不足】
津軽塗は、ものすごく根気のいる作業である。量産はできず、単価は高くなり、買う人が少なく、儲からない。ちょっとやってみるくらいなら面白いだろうが、一生の仕事とするのは覚悟がいるだろう。成り手がいないのだ。
しかし、人とはあまり関わらず、ずっと作業をしていればいいので、そういうことが得意な人には向いている。コミュ力は不要である。
昔から、コミュ力がない人には、こういう仕事があったのだ。手作りに価値があるので、AIに仕事を奪われることもない。
津軽塗に限らず、日本には様々な素晴らしい伝統工芸があるのだし、そういうところで働きやすくするような仕組みあれば、助かる人も多いのでは?
そして、津軽塗を買って、使いましょう。値段は張るけど、美しいし、丈夫で何十年も使えるし、手入れは簡単だし、塗り直しまでできて、持続可能だそうですよ。
【津軽弁】
難しそうである。父役の小林薫も習得が大変だったと言っている*1。父が呼びかけるときの音が、なんとも表現しにくい発音であった。昔の日本語の名残りなのかもしれない。
【まとめ】
スリル、サスペンス、アクション、意外な結末、不条理または不可解な話などを観たい人には、お勧めできない。
安心して「いい話」を観たい人、津軽塗に興味がある人、日本の美しさに触れたい人には、勧められる。
バカ塗りの娘
伝統工芸を知る ★★★★★
映像美 ★★★
ドラマ ★★
*1:オフィシャルサイトより