晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

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映画「大いなる自由」~大いなる不自由?

【概要】

 かつてドイツでは、男性の同性愛は刑法175条で罰せられた。その頃の話。

 ハンスは、ナチス・ドイツの時代から、同性愛の罪で収容されており、戦後も釈放されることなく、アメリカの統治下でも収容が続けられた。

 出所しても、繰り返し検挙され、収監される。

 ヴィクトールは、長年、刑務所にいて牢名主のようになっている。妻の浮気相手を衝動的に殺してしまったのだった。

 初め、同室となったハンスを、女好きのヴィクトールは毛嫌いするが、次第に友情が芽生えていく。ハンスは、刑務所内で恋人との逢瀬を重ねるが、一人は自殺し、一人はハンスが罪を被って自由にしてやる。

 釈放されても、ハンスは、わざと軽犯罪を犯して、再収容を待つのであった。

 

刑務所の中

 刑務所暮らしも長く続けると、それに適応してしまうようだ。

 ヴィクトールは、仮釈放の審査の直前に隠しておいた薬物を注射して、出所を拒否する。長年住んでいるヴィクトールの部屋は、アパートの部屋のようだ。看守に賄賂を渡して、要求を通している。配膳係担当なので、受刑者たちの連絡役をできるというメリットがあるようだ。

 刑務所の中では、それなりに社会ができている。看守も規則違反は罰するが、なあなあでやっている面もある。刑務所としては、一定期間、無事に服役させるのが目的なのだから、自然とそうなるのだろう。しかし、同性愛の罪で服役しているのに、恋人と一緒にするなら、なぜ捕まえたのだろう?

 なお、居室の入口に、何の罪で服役しているかが分かるように、「175」と書かれていた。このせいで差別されるのである。これも酷い話だ。

 

【懲罰房】

 規則に反すると、裸にして真っ暗闇の房に放り込まれる。衣服をはぎ取ること、光を与えないこと、これは人間の尊厳を破壊するものだろう。こうやって、無気力な人間に仕上げていくのか。そこにタバコとマッチが投げ入れられ、マッチの火を眺めて陶然とするハンス。火というものは、何か根源的なものを感じさせる。

 

【タバコ】

 刑務所の中では、タバコは結構流通しているようであり、看守も注意することはない。部屋でもスパスパやっている。ハンスは、シケモクを集めて、聖書を破った紙で巻いて吸っていた。同性愛は、聖書で禁じられているので、聖書は嫌いなのだろう。その他、聖書に針で穴を開けて、恋人への通信文を作ったりもしていた。

 

【タイトル】

 謎であった。映画のほとんどが、刑務所での不自由な場面ばかりであった。

 ハンスという人も、家族とか生い立ちなどは分からず、行動はするが内面を語ることもないので、最後まで謎であった。

 せっかく出所したのに、高級店のショーウインドウを割って、捕まろうとする。どこが自由なのか。不自由な場所で、工夫を重ねて、自由を見出すというところに生甲斐を感じているのであろうか。確かに、制限のある方が、かえって自由を感じやすいということはあるかもしれない。

 

【傑作】

 チラシには「尋常ならざる傑作」と書かれているが、私には今一つ良く分からなかった。わりと最近まで、こんな酷い扱いがあったということは、初めて知った。

 俳優が、若い頃から中年期まで、極めてリアルに演じているところに感心した。メイキャップ賞を受賞しているとあるが、どうやっているのだろう。

 暗闇でマッチを灯す場面などは、確かにレンブラントの絵のようであった。

 なお、劇場の入口でマッチが配られていた。今どき、マッチを貰うとは!

 

大いなる自由 

社会派 ★★★★

芸術性 ★★★