晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

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映画「生きるLIVING」~リメイクの面白さ

 黒澤明の「生きる」のリメイク版。

 リメイクといっても、あのカズオ・イシグロが脚本を書いている。(「石黒和夫」だと普通の名前なのに、カズオ・イシグロと書いた途端に知的な感じがするのは不思議だ。)

 黒沢明の「生きる」をDVDで観たのは、ずいぶん前のことだが、「生きるLIVING」を見ているうちに、いくつかのシーンが蘇ってきた。たとえば、元部下の若い女性がウサギのおもちゃを面白がるところとか、細かいところまで原作をなぞっている。

 NHKで見たイシグロへのインタビューによれば、原作では、主人公が死んだ後は、何も変わらないという諦念が描かれていたが、イシグロ版では、若者が主人公の遺志を引き継いでいくという風にしたという。

 原作版を見たときには、若い女性からパワーをもらった主人公が最後の力を振り絞るということから、柳田国男の「妹の力」を連想したことを思い出した。

 本作では、イギリス社会の堅苦しさが印象的であった。みんな異様に礼儀た正しく、部下に対しても「Mr」「Mrs」を付けて呼んでいる。階級社会で、貴族の上司にはまともに話すことも許されない。噂話はすぐに広まる。

 原作を見たときには、他人事であったが、今回は主人公に感情移入してしまった。

 ストーリーは同じでも、観ている方が変わったのだった。