【あらまし】
引退してなぜかベネチアで暮らす名探偵ポアロ。ハロウィンの夜、旧知のミステリー作家に誘われ、古い館で行われる降霊会に参加する。屋敷で亡くなった令嬢の霊が見えるという胡散臭い霊媒師のトリックを見破るポアロ。しかし、次から次へと起こる怪奇現象、そして第二の殺人が……。犯人は誰だ?最後に解き明かされる意外な真相!
という感じのエンタメ作品でした。
【余裕のないポアロ】
私のポアロのイメージは、かつてNHKで放映されたイギリスのテレビドラマ「名探偵ポアロ」のデヴィッド・スーシェである。小柄で小太り、卵形の禿頭にピンと整えられた口髭。几帳面な性格で、色々とこだわりが強く、キザでうぬぼれが強く、自信満々で余裕しゃくしゃくな感じである。
しかるに、本作のポアロは、痩せていて、髪はふさふさ、背も高いし、かっこいい。髭は立派だが、とってつけたような感じ。次々に起こる怪奇現象に怯えて、ずっと眉間にしわを寄せ、余裕がない。
イメージとは、ずいぶん違うポアロであった。
【調査のやり方】
そもそも、ポアロの調査のやり方は、スコットランドヤードから提供された捜査資料を元に、関係人から話を聞いて回り、相手の反応や表情などを観察しながら、心理分析を加えつつ、仮説を立てて、検証していくというスタイルである。
しかるに、本作のポアロは、事件に巻き込まれてしまい、何人かに尋問しただけで、大して調査もできていない。最後には、真相を解き明かしてみせるが、なんで分かったの?という感じは否めなかった。
【ポアロの魅力】
ポアロの魅力は、そのコミカルなキャラクターと会話を重ねて進めていく、緻密な分析にある。意外な結末は、落語のオチのようなもの。過程が大事なのだ。本作は、ホラー仕立てになっていて、落ち着いて見ていられない。意外な結末を示されても、ふーん、という思っただけであった。(個人の感想です)
もちろんエンタメとしては、それなりに楽しめる映画ではありましたが。
【蛇足1】
上映時間の都合で、ドルビーシネマの劇場で見た。うるさいばかりで、あまり良いものとは思えなかった。
【蛇足2】
映画の帰りに本屋に寄って、原作「ハロウィーン・パーティ」を買って読んでみた。こちらは、いつものポアロで、面白く一気に読めた。
なお、本作との関連は、登場人物の名前が被るのと、ハロウィンの場面があるくらいで、原作とは似ても似つかぬ話であった。
エンタメ ★★★
サスペンス ★★★
ミステリー ★★★