晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

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三宅香帆「考察する若者たち」~若者たちは報われたい?

 なんでも、近頃の若者は映画や本をただ楽しむだけでは飽き足らず、報われることを求めるのだとか。たとえば、『ワンピース』とか『鬼滅の刃』の映画が公開される。するとすぐに考察動画なるものが配信される。それは、その作品に隠された伏線や裏設定を解説するものだ。そうやって、作者が仕掛けた謎を解く。若者は、映画を見て「面白かった」ではまだ半分で、正解を探り当てるゲームをすることでコンプリートするらしい。おまけ目当てにビックリマンチョコを買うみたいな話である。

 「報われ」をキーワードに、著者は、若者の傾向一般について解説する。たとえば、今の若者はアイドルに「萌える」のではなく、「推す」。「萌え」はその場限りの感情だが、「推し」は、アイドルの成長という報いがあるという。仕事に「やりがい」よりも「成長」を求めるのも、「成長」の方が収入や安定などの見返りがあるから。その背景の一つには、「親ガチャ」と言われるように、生まれによっては努力しても報われないという諦めがある。また、AIが常に最適解を示してくれるようになり、SNSのプラットフォームが好みをリコメンドしてくれるので、失敗しない選択ができるようになったということも大きい。さらに、アリゴリズムは、若者たちが「界隈」という同質的なグループに閉じこもることも助長している、という。

 このように分かりやすく分析しつつも、著者は若者目線に立っている。終章では考察も創作の一つの在り方として十分にありだとしつつも、正解探しに終始するのではなく、自分の感想も大事にしてみたら、と誘う。そして、あとがきでは、本書の内容を話したときには若者から質問を受けた場合に備えて、「やりたいことや自分だけの感想を見つけるためコツ」まで箇条書きで指南する。なかなか行き届いている。

 ちょっと雑な議論だとは思いつつも、文章の流れが良く、構成が巧みで、すらすらと読んでしまった。ターゲットは若者を理解したい中高年層のようであり、まんまとはめられてしまった感も。

 

「考察する若者たち」三宅香帆著 PHP新書 1,100円