※ネタバレあり
【あらまし】
チャップリンの出自をめぐる物語。チャップリンの息子マイケルが語り手となって、亡き父のルーツをめぐってインタビューをして歩く。
【8分の1】
チャップリンには、実はロマ(ジプシー)の血が流れていた、ということがテーマである。といっても、それは隠し事ではなく、生前のチャップリンはそれを公言していたし、誇りに思っていた。
ロマの人々は、流浪生活を送っているものの、もともとは古い高貴な種族と信じられており、独特の芸能や音楽を持っているという。チャップリンは「放浪紳士」としての自分を重ね合わせたようだ。
とはいえ、ロマの血といっても、8分の1。チャップリンの曽祖父の一人がロマの人らしき女性と結婚していたらしいという話である。残りの8分の7の方が圧倒的に優勢な気もしたが……
チャップリンは、舞台芸人の父母の間に生まれた。早い時期に父母は別れて、兄とともにシングルマザーの母に育てられた。幼少期は極貧で、貧窮院で生活していた時期も長かった。早くから舞台に立ち、喜劇俳優として各地を巡り、映画俳優として「小さな放浪紳士」というキャラクターを確立して世界的に有名になり、莫大な富も得た。しかし、共産主義者のレッテルを貼られてアメリカを追放され、イギリスを経て、スイスに移住した。生涯で四回の結婚をし、11人の子をもうけた。なお、マイケルは、最後の結婚相手ウーナ・オニールとの間の二番目の子である。
こんな生い立ちとキャリアからチャップリンは、拠り所をロマに求めたのだろう。
チャップリンは、自分がどこで生まれたかは知らなかった。自伝を発刊した後にある人物から手紙を受け取る。その手紙には、チャップリンはロマのキャンプ地で産まれたと書いてあった。信憑性に乏しい手紙だが、チャップリンはその手紙を大事に保管していた。
【マイケル】
マイケルは、チャップリンが57歳の時の子である。物心ついた頃には、父は、世界的に有名な人物で、家は裕福であり、何不自由なく育った。幼い頃は父とも共演した。父から期待をかけられたのだが、マイケルは勉強が嫌いで、彼女と遊んで周り、十代半ばには家出同然にイギリスに渡り、長年帰らなかった。偉大な父がプレッシャーになったのだった。
現在、マイケルは79歳。作家。長く伸ばした白髪をポニーテールにして、中折れ帽をかぶり、なかなか雰囲気のある老人である。マイケルも放浪的な人生を送ってきた。子どもや孫も多くいる。しかし、この歳になっても、父との確執を引きずっている。マイケルの旅は、自らのルーツを確かめるための旅でもある。人生を振りかえり、父とのつながりを確かめ、人生の意味を見出そうとしているようだ。
マイケルの他にも、チャップリンの子らがインタビューに応じている。皆さん俳優、作家、音楽家など芸術・芸能系の人々である。チャップリンという一人の人物が家族に与えた影響の大きさ感じさせる。また、本作の監督カルメン・チャップリンは、マイケルの娘であり、女優である。ロマにルーツがあるということは、チャップリン一族のアイデンティティーでもあるようだ。
★★★
途中で挿入されるチャップリンの映画作品のシーンがどれも魅力的。チャップリン映画を観てみたくなった。