晴れ、ときどき映画と本、たまに旅

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映画「アダマン号に乗って」~芸術と対話

 アダマン号は、セーヌ川に浮かぶ船のようなデイケアである。精神疾患の人たちが通っている。すごい演技だなと思っていたら、これはドキュメントで実際の利用者さんたちが出ているのだった。ストーリーはない。日常が描かれ、時々、インタービューが入る。
 

 アダマン号では、何をするかは利用者同士の話し合いで決められる。司会は当番制で、二人が担当する。みんな結構、自分の意見を言うし、発言は遮らずに聞いている。
誰が医者や職員なのかも分からない。職員の制服もない。運営しているカフェの会計をみんなでする場面が出てくるが、その時などに仕切っている人がいて、それが職員のようである。
 フランス人だからなのか、絵を描いたり、ピアノやエレキギターを演奏したり、歌を歌ったりしている。ピアノやギターを弾くスペースもある。ロックシンガーがいたり、作曲をしている人もいる。そのほか、カフェでコーヒーを出したり、みんなで料理したりもしている。

 ちょっとエキセントリックなところもあるが、みんな普通である。芸術家の集まりといわれても、違和感がない。楽しそうである。争いやトラブルはないようだ。セーヌ川を見ながら、テラスでコーヒーを飲んだり、タバコを吹かしたりするのは、楽しそうである。

 もちろん、みんな病気を抱えているおり、差別や偏見の話、薬の話なども出てくる。親の期待に応えられない人とか、子どもと離ればなれになったりしている人もいる。本物の芸術家みたいな人もいて、言うことも立派だし、作曲などもしている。ただし、自分と兄は、ゴッホとその弟のテオの生まれ変わりだと信じている。

 これが映画になるということは、こういう施設は珍しいということなのだろうか。日本ではどうなのだろうか。
 アダマン号のような施設を作るには、お金もかかるだろうが、お金の問題よりも、考え方の違いが大きいと思う。
 アダマン号は、精神病院の付属施設で、病院側と患者の意見を聞いて、作ったという説明が最後に出てきた。驚いた。

 人間には、対話と芸術が必要だということが分かる映画であった。